2026.7.13 在宅ケア
透析患者の体力低下が心配な家族へ 自宅でできる運動の見守り方
透析から帰ると、そのまま夕方まで横になっている。少し前まで楽しんでいた散歩にも、誘うと「疲れているから」と首を振る。そんなご家族の姿に、体力の低下を感じて心配になっていませんか。運動をすすめてよいのか、どこまで動いて大丈夫なのか、ご家族だけでは判断が難しい場面です。本記事では、ご本人の気持ちを尊重しながら、自宅でできる運動の見守り方を整理します。
ご本人が感じやすいこと
透析後の疲れが抜けない、動くとおっくうに感じる、心配をかけたくなくて「大丈夫」と答えてしまう。そんな気持ちを抱えていることがあります。
ご家族が心配になりやすいこと
歩く速さが落ちた、横になる時間が増えた、運動をすすめてよいのか分からない。声のかけ方に迷うご家族は少なくありません。
透析患者さんの体力低下は「動かない日」が積み重なって進みます
疲れやすさの背景は一つではありません
日本では約34万人の方が透析を受けながら生活しています。透析患者さんの疲れやすさには、透析後の消耗、貧血、血圧の変動、加齢、活動量の減少など、複数の背景が重なっていることがあります。「年のせい」「透析だから仕方ない」と一つの理由で片づけてしまうと、整えられる部分まで見過ごしてしまうことがあります。
体を動かさない日が続くと筋力が少しずつ落ち、動くことがさらにおっくうになる、という流れが起こりやすいことも知られています。だからこそ、体の状態に合った範囲で活動量を保つことが大切だと考えられています。当院も「しっかり食べて、適度な運動、充分な透析を」という考え方を診療の軸にしています。
一般的な「軽い運動の例」と、始める前の大前提
自宅でよく話題になるのは、特別な器具を使わない軽い運動です。あくまで一般的な例として、次のようなものがあります。
- 天気のよい日に、近所を短く歩く
- テレビを見ながら、その場で軽く足踏みをする
- 椅子からゆっくり立ち上がり、ゆっくり座る動きを繰り返す
- 無理のない範囲で、肩や足首を軽く動かすストレッチ
ただし、これらが合うかどうか、どのくらいの強さや頻度で行えるかは、貧血や心臓の状態、血圧、骨の状態など、ご本人の体によって大きく異なります。本記事では具体的な回数や強度には踏み込みません。運動を始める前に、必ず主治医へ「どの程度なら動いてよいか」を確認してください。ご家族が見守りを考える時も、この確認が出発点になります。
家族ができる「見守り」のチェックリスト
見守りの基本は、声かけ・観察・環境づくりです
ご家族の役割は、運動をさせることではなく、ご本人が安心して体を動かせる状況を整えることです。主治医から運動の了解を得たうえで、次のような見守りができます。
見守りでできることチェックリスト
- 動く前に「今日の体調はどう?」とひと言聞いてから誘う
- 顔色、息切れ、ふらつきがないかをさりげなく見守る
- 運動した日と、その後の体調をカレンダーに短くメモする
- 床の段差や滑りやすい履き物など、転びやすい環境を整えておく
- シャントのある腕に強い負担がかかる動きになっていないか気にかける
- できた日は結果よりも「続けられたこと」を一緒に喜ぶ
メモは詳しく書く必要はありません。「散歩した」「途中で息切れ」程度の短い記録でも、診察時に主治医へ伝える手がかりになり、運動の内容を見直す材料になります。
ご本人の気持ちを置き去りにしないこと
心配のあまり、運動の予定をご家族が決めて、できたかどうかを毎日確認する形になると、ご本人にとって運動が「やらされるもの」になってしまうことがあります。誘っても気乗りしない日は、休む選択も同じように尊重してください。見守りは管理ではなく、隣を歩く伴走に近いものです。
運動を中止して相談すべきサイン
- 胸の痛み、強い息苦しさ、動悸がある
- 強いめまいやふらつき、冷や汗が出ている
- シャントのある腕の痛み、腫れ、出血がある
- 発熱や強いだるさが続いている
- 足のむくみや体重の増え方が、普段と明らかに違う
胸の痛みや強い息苦しさ、意識がもうろうとするような症状がある場合は、運動を中止し、すぐに医療機関を受診してください。発熱がある場合は、自己判断で透析を休まず、まず通院先へ連絡して受診方法を確認することが大切です。むくみや体重の変化が気になる時も、次の診察を待たずに主治医へ相談してください。
運動の可否や強度は、主治医と確認してから
ご家族も一緒に相談できます
「どこまで動いてよいか」は、透析中の血圧、体重の変化、貧血の状態、心臓や骨の状態などを踏まえて、診察の中で確認していくものです。当院では、透析診療に加えて腎臓内科・一般内科で体調全体を確認できるため、疲れやすさの背景に別の要因がないかも合わせて整理できます。
診察の場でご家族が見守りの中で気づいたことを伝えていただくと、ご本人が言葉にしにくい変化も含めて確認しやすくなります。何をどう聞けばよいか分からない段階でも構いません。
| 相談できる相手 | 主治医、看護師、臨床工学技士、受付スタッフ |
|---|---|
| 体調全体の確認 | 腎臓内科・一般内科で対応 |
| 内科外来 | 月水金 9:30-13:00 / 15:00-18:00、土 9:30-13:00(AMのみ) |
| 電話 | 03-5683-2277 |
| アクセス | 南砂町駅1番出口徒歩6分 / 東陽町駅4番出口徒歩9分 |
運動の話は、一度決めたら終わりではありません。季節や体調によって合う動き方は変わるため、診察のたびに少しずつ調整していくものと考えてください。記録したメモを持参すると、その調整がしやすくなります。
見守りを始める前に、ご家族と確認したいこと
- 運動をしてよいか、どんな内容ならよいかは、始める前に主治医へ確認する
- ご家族の役割は、声かけ・観察・環境づくり。ご本人の意思を尊重する
- 中止すべきサインが出たら、無理をせず受診や相談につなげる
「運動をすすめてよいのか迷っている」という段階のご相談でも構いません。当院では、ご家族からのご相談も受付スタッフや看護師がお受けしています。体力の心配を、ご家族だけで抱え込まないでください。
よくある質問
透析をしていても運動はしてよいのでしょうか?
体の状態によって異なります。貧血や心臓の状態、血圧などを踏まえた判断が必要なため、始める前に主治医へご相談ください。
家族が運動の内容を決めてもよいですか?
運動の種類や強さはご本人の状態により異なるため、主治医と相談して決めることをおすすめします。ご家族は体調の記録や様子の共有で支えられます。
本人が運動を嫌がる時はどうすればよいですか?
無理に誘う必要はありません。体調や気持ちを尊重し、心配が続く場合は診察の時に主治医や看護師へ伝えてください。
運動を中止した方がよいサインはありますか?
胸の痛み、強い息苦しさ、強いめまいなどがあれば中止してください。症状が強い場合は、すぐに医療機関を受診してください。
透析がある日にも運動してよいですか?
透析の前後は血圧や体調が変わりやすい時間帯です。透析日の過ごし方も含めて、主治医へ確認してください。
見守りでは何を記録すればよいですか?
運動した日、顔色や息切れの様子、ご本人の感想を短くメモするだけでも、診察時の大切な手がかりになります。
家族だけで相談に行ってもよいですか?
はい。当院では受付スタッフや看護師がご家族からのご相談もお受けしています。迷っている段階でも、遠慮なくご連絡ください。
※本記事は、当院で運動についてよくいただくご相談を整理したものです。運動の種類や強度は患者様の状態により異なるため、始める前に主治医へご相談ください。
