2026.10.26 透析
透析患者の下痢・嘔吐|水分補給と感染対策を相談する目安
下痢や嘔吐が続くと、「脱水が心配だからたくさん飲むべきか」「水分制限を守るべきか」と迷うことがあります。透析中の方は、失われる水分と体に残る水分の両方を考える必要があり、普段の指示だけで判断しにくい場面です。当院では体調と透析予定を確認しながら対応を相談します。今回は、連絡時に伝えたい情報と、来院前からできる感染対策をお伝えします。
飲めない・食べられない状態が続くときは、次回透析まで待たず透析施設へ連絡してください。水分の量、薬、透析予定を一人で変更するのではなく、症状を伝えて対応を確認します。
下痢や嘔吐では、普段の体重管理と違う確認が必要です
水分が失われても、自由に補給できるとは限りません
下痢や嘔吐では水分や電解質が失われます。食事や飲水も減ると脱水につながる一方、透析患者さんは余分な水分を尿から十分に出せない場合があり、多く飲めばよいとは一律に言えません。尿の出る量や心臓の状態によっても対応が変わります。
普段より体重が増えていないから問題ない、という判断も避けましょう。体重だけでは、血圧の変化や栄養状態、体液の状態を十分に評価できません。症状の回数、飲めた量、体重や血圧の経過などを共有し、医療者が必要な診察や治療を考えます。
経口補水液やスポーツ飲料も、量と成分の確認が必要です
経口補水液には水分に加えてナトリウムやカリウムなどが含まれます。一般的な脱水時の説明をそのまま透析患者さんに当てはめず、何をどの程度飲むかを医療者へ確認してください。スポーツ飲料も経口補水液と同じものではありません。
- 何時から、下痢や嘔吐が何回あったか
- 少量でも飲食できるか、飲んでも吐くか
- 普段と比べた体重・血圧・尿量の変化
- 最後に透析を受けた日時と次回の予定
原因を決めつけず、急いで受診するサインを見ます
感染症以外に、薬や別の病気も関係します
下痢や嘔吐は感染性胃腸炎だけで起こるわけではありません。薬の影響や食事、消化器の病気なども考えます。最近始めた薬、下剤、抗菌薬の使用、同居する方に同じ症状があるかも大切な情報です。「食あたりだろう」と決めて市販薬で抑え続けないようにしましょう。
| 状況 | 伝えてほしい情報 | 対応の考え方 |
|---|---|---|
| 下痢・嘔吐が続く | 回数、開始時刻、飲食できる量 | 早めに施設へ連絡し受診を相談 |
| 同居家族にも症状がある | 発症時期と症状の内容 | 感染の可能性を踏まえ来院方法を確認 |
| 強い腹痛・血便・意識の変化 | 症状の強さと始まった時刻 | 次の透析を待たず医療機関へ |
ぐったりする、強い腹痛、血便は待たないでください
意識がぼんやりする、立っていられない、強い腹痛が続く、血を吐く・血便が出る、強い息苦しさがある場合は、すぐに医療機関を受診してください。ご本人だけで移動が難しい状態や症状が強い場合は救急要請を検討します。繰り返し吐いて水分を保てない場合も、早急な相談が必要です。
連絡先につながらない場合に備え、夜間や休診時の受診先を普段から確認しておくと安心です。緊急時は施設への連絡のために救急受診を遅らせないでください。救急担当者には透析中であること、最後の透析日時、透析施設名を伝えます。
食べられない日の薬は、処方医に確認します
食事量が少ないと、糖尿病の薬や食事に合わせる薬などの扱いを確認する必要があります。嘔吐後に薬を飲み直すかも、薬の種類と時間によって異なります。まとめて中止したり、吐いた分を追加したりせず、透析施設や処方医、薬剤師へ具体的な薬名を伝えて相談してください。
普段から食べられないときの対応が決まっている方は、その指示を確認し、今回の症状でも同じ対応でよいかを相談します。市販の下痢止めや吐き気止めも、原因や腎機能によって適さない場合があります。新たに購入する前に透析中であることを伝えましょう。
来院前の連絡は、透析継続と感染予防の両方に役立ちます
自己判断で休まず、送迎を含めて相談します
発熱の有無にかかわらず、感染性胃腸炎が疑われる下痢・嘔吐があれば、来院前に透析施設へ連絡してください。自己判断で透析を休まず、治療を続ける方法と受診先を相談します。送迎を利用する方は、車に乗る前に症状を伝えることが大切です。
電話で症状を共有
体温、回数、食事と水分の状態を、分かる範囲で伝えます。
受診・透析方法を確認
来院時刻、移動、待機場所などの案内を確認します。
来院後も変化を伝える
移動中に吐いた、急にふらつくなど、新しい変化をスタッフへ知らせます。
当院では感染症対策としてゾーニングと個室陰圧室7床を備えています。ただし、下痢や嘔吐があれば一律に陰圧室へ入るというものではなく、症状や感染経路、空床状況などを踏まえて対応します。陰圧の設備だけで、手指や環境を介した感染まで防げるわけではありません。
家庭では手洗いと汚物の適切な処理を行います
ノロウイルスなどでは、便や吐物を介して感染が広がることがあります。トイレの後や食事前には石けんと流水で手を洗い、アルコール消毒だけで代用しないようにします。吐物に素手で触れず、処理する方は使い捨て手袋やマスクなどを使用してください。
処理や消毒は、対象となる場所に合った方法を確認して行います。塩素系漂白剤を使うときは製品表示に従い、他の洗剤と混ぜないでください。ご家族に感染の疑いがある場合も、本人が無症状だから不要と決めず、透析施設へ状況を知らせて対応を相談しましょう。
大切にしたいポイント
下痢・嘔吐時は、水分不足と水分の取りすぎの両方に配慮します。症状、飲食、体重、透析予定を共有し、補給や薬、通院方法を医療者と確認しましょう。
よくある質問
下痢で体重が減ったので透析を休んでよいですか?
自己判断で休まないでください。体重の減少だけでは治療の必要性は判断できません。症状を連絡し、受診と透析の方法を確認します。
経口補水液を飲んでもよいですか?
透析患者さんでは量や成分に注意が必要です。尿量や検査値、体液の状態によって異なるため、飲む種類と量を医療者へ相談してください。
薬を飲んですぐ吐いたら飲み直しますか?
自己判断で追加しないでください。薬の名前、飲んだ時刻、吐いた時刻を伝え、処方医や薬剤師に対応を確認します。
熱がなければ感染症ではありませんか?
発熱のない感染性胃腸炎もあります。下痢や嘔吐があること自体を来院前に知らせ、送迎や待機場所を含めて相談してください。
家族だけが吐いている場合も伝えますか?
同居する方の症状も感染対策の判断に役立ちます。ご本人の体調と合わせて伝え、必要な対応を施設へ確認してください。
※本記事は、当院で透析中によく確認する体調変化や感染対策の目安を整理したものです。発熱や呼吸器症状、シャントトラブルがある場合は自己判断せず、主治医または医療機関にご相談ください。
