2026.9.14 家族
透析患者の物忘れが気になったら|家族が記録したい変化と相談先

透析中のご家族に物忘れや段取りの変化が見えると、「認知症ではないか」「本人へどう伝えればよいか」と迷うことがあります。変化の原因は認知症だけではなく、透析日の疲れ、睡眠、感染症、薬、気分の落ち込み、視力や聴力なども関係します。本記事では、本人を責めずに日常の変化を記録し、透析スタッフや医療機関へつなぐ方法を整理します。
ご本人の不安
失敗を指摘される怖さや、これまで通り暮らせなくなる不安を抱えていることがあります。
ご家族の不安
通院や生活の安全を守りたい一方で、どこまで手を出すべきか迷うことがあります。
物忘れだけでなく「以前との違い」を見ます
一つの失敗より、生活に影響する変化が続くかを確認します
予定を一度忘れた、名前がすぐ出てこなかったという出来事だけで、認知症と判断することはできません。透析の曜日を繰り返し間違える、同じ質問が短時間に増える、支払い・調理・交通機関の利用など以前できていた手順が難しくなるといった変化が続くかを確認します。
ご本人は変化に気づき、不安を隠していることもあります。「また忘れた」「しっかりして」と責めると、相談を避けるきっかけになりかねません。「最近の体調を一緒に確認したい」「透析のあとに疲れが残っていないか聞いてみよう」と、健康確認の言葉から始めると話しやすくなります。
透析日だけの変化か、毎日続く変化かを分けます
透析後は血圧低下や疲労、睡眠不足などで集中しにくいことがあります。透析日の帰宅後だけ反応が遅いのか、非透析日にも同じ変化があるのかを分けると、相談の手掛かりになります。食事が取れていない、夜眠れていない、聞こえにくい、眼鏡が合っていないといった生活上の要因も確認します。
薬の変更後に眠気が強くなった、発熱や咳の後から様子が違う、転倒して頭を打った後に会話がかみ合わないなど、始まるきっかけがあれば必ず伝えてください。
家族の記録は、診断ではなく変化を共有するために使います
場面
いつ、どこで、何をしようとして困ったかを具体的に書きます。
時間
透析前・透析後・非透析日の違い、症状が続いた長さを残します。
体調
発熱、睡眠、食事、血圧、転倒、薬の変更など同時の変化を確認します。
生活への影響
通院、火の扱い、金銭、道迷いなど安全に関わる出来事を共有します。
「できなかったこと」だけでなく、できていることも残します
記録が失敗の一覧になると、ご本人もご家族もつらくなります。自分で通院準備ができた、家族へ予定を確認できた、食事を整えられたなど、保たれている力も一緒に書いてください。支援が必要な部分と、ご本人に任せられる部分を分ける材料になります。
日記のように長く書く必要はありません。「9月3日、透析後18時、帰宅後に同じ質問を4回。夕食後は落ち着いた」「9月5日、非透析日、買い物と支払いは普段通り」のように、短い事実で十分です。回数を正確に数えられなくても、普段との違いが伝われば役立ちます。
急な混乱は、認知症の経過と決めつけないでください
- 数時間から一日ほどで急に会話がかみ合わなくなった
- 片側の手足が動かしにくい、言葉が出ない、顔のゆがみがある
- 高熱、強い息苦しさ、意識がぼんやりする、けいれんがある
- 転倒して頭を打った後に、眠気や吐き気、反応の変化がある
これらは救急対応が必要な病気の可能性があります。透析日まで待たず、救急要請を含めてすぐに医療機関へご相談ください。
透析スタッフ・内科・地域の相談先を段階的につなぎます
まず普段の様子を知る場所へ共有します
透析室のスタッフは、来院時の会話、体重測定、透析中の反応、帰宅時の様子などを継続して見ています。ご家族が気づいた変化を伝えることで、透析中だけの変化か、体調や薬に関係する可能性があるかを確認しやすくなります。ご本人の前で話しにくい内容がある場合は、電話で伝える方法もご相談ください。
当院は一般内科と腎臓内科を併設しています。診察では、発熱や感染、血圧、貧血、睡眠、薬、気分など身体面を確認し、必要に応じてもの忘れ外来や専門医療機関へつなぎます。当院だけで診断を完結できるとは限りませんが、最初の相談先として日常の変化を整理できます。
| 透析施設 | 透析前後の変化、通院の安全、薬や体調との関係を共有します。 |
|---|---|
| かかりつけ医・一般内科 | 感染、睡眠、聴力、薬、気分など認知機能以外の原因も含めて確認します。 |
| もの忘れ外来・専門医療機関 | 必要に応じて詳しい認知機能評価や画像検査などにつなぎます。 |
| 地域包括支援センター | 生活や介護の困りごと、地域サービスについて相談できます。 |
ご家族がすべてを代わりに行うと、一時的には早く進んでも、ご本人が保っている力を使う機会が減ることがあります。通院日を一緒にカレンダーへ書く、受付で本人から名前を伝えてもらうなど、安全を確保しながら任せられる場面を残してください。支援の量は固定せず、体調と変化に合わせて見直します。
独居や日中一人になる時間が長い場合は、緊急連絡先、送迎時の受け渡し、服薬や食事の見守りを誰が担うかも相談材料になります。すぐに介護サービスを決める必要はありませんが、困りごとが増える前に地域包括支援センターの連絡先を確認しておくと、選択肢を持ちやすくなります。
家族だけで抱えず、変化が小さいうちから共有してください
ご本人の尊厳を守ることと、安全を守ることは両立できます。診断名を決めるためではなく、「今までと違う生活上の変化」を確認するために、短い記録を持ってご相談ください。
よくある質問
物忘れがあれば認知症ですか?
物忘れだけでは判断できません。睡眠、感染、薬、気分、視力や聴力など別の原因も含めて医療機関で確認します。
本人が受診を嫌がる時はどうしますか?
失敗を責めず、「体調や薬を一緒に確認したい」と伝えてください。家族だけで先に相談する方法も医療機関へ確認できます。
何を記録すればよいですか?
起きた場面、日時、透析日との関係、同時の体調変化、生活への影響を短く残してください。
透析室に家族から伝えてもよいですか?
はい。ご本人の普段の様子と家族の観察を合わせると、変化を確認しやすくなります。
急に混乱した時も予約外来を待てばよいですか?
急な意識変化、麻痺、言葉の出にくさ、高熱、転倒後の変化は救急対応が必要なことがあります。すぐに医療機関へ相談してください。
地域の生活支援はどこへ相談できますか?
お住まいの地域包括支援センターで、介護や生活の困りごとを相談できます。医療機関からつなぐこともあります。
※本記事は、透析中の物忘れや生活上の変化について当院でよくいただくご相談を整理したものです。急な意識変化や神経症状がある場合は自己判断せず、すぐに医療機関へご相談ください。
