2026.11.3 透析
透析中の手のしびれが気になる方へ|症状の違いと受診の目安
箸を持つ指がしびれる、夜に手の痛みで目が覚める、以前より物を落としやすい。透析を続ける中でこうした変化があると、シャントのためなのか、年齢のためなのかと迷うかもしれません。手のしびれには神経や血流など複数の原因があり、症状だけでは区別できません。急な異常を見逃さず、どの指に、いつ、どんな変化があるかを伝えることが大切です。
最初に確認すること
急に始まったか、手の色や冷たさが変わったか、力が入りにくいかを確認します。強い異常があれば、記録を完成させるより先に医療者へ連絡してください。
「透析のせい」と決めず、症状の特徴を見ます
指先の感覚と、手を使う動作は分けて伝えます
しびれという言葉には、ピリピリする、触った感じが鈍い、痛みが走るなど、異なる感覚が含まれます。「右の親指と人差し指」「手のひら全体」など、場所を指し示していただくだけでも手がかりになります。左右両方か片方か、手首や腕まで広がるかも伝えてください。
感覚の変化だけでなく、ボタンを留めにくい、袋を開けづらい、コップを落とすなどの動作の変化も重要です。生活で困った場面を挙げると、しびれの強さを数字で表すより説明しやすい場合があります。「痛みは軽いが細かい作業ができない」という点も遠慮なくお話しください。
手首を通る神経が圧迫される場合があります
手根管症候群は、手首の狭い通り道を通る正中神経が圧迫される病気です。親指から薬指の親指側にかけてのしびれや、明け方の痛み、物をつまみにくいなどの症状が現れることがあります。透析を受けている方にも起こりますが、似た症状があるだけで診断はできません。(参考:日本整形外科学会:手根管症候群)
手首以外の場所で神経に負担がかかっている場合などもあり、診察では感覚や筋力、症状の範囲を確認します。必要に応じて、整形外科など、ほかの医療機関・診療科で検査を受けることになります。インターネットの自己テストを繰り返して判断せず、症状をそのまま伝えましょう。
長く透析を続ける方で確認すること
透析関連アミロイドーシスとの関係
長期間透析を受ける方では、β2ミクログロブリンというたんぱく質が組織に蓄積し、関節などの症状に関わることがあります。透析関連アミロイドーシスと呼ばれ、手根管症候群の原因となる場合もあります。ただし、透析年数だけで発症の有無を判断することはできません。(参考:NIDDK:アミロイドーシスと腎臓病)
「長く透析をしているから仕方がない」と受け止めず、手の症状や生活への影響を知らせてください。原因の確認と、今困っている動作への対応はどちらも大切です。透析方法を変えればしびれが解消する、と一律に考えるのではなく、検査結果から治療を相談します。
シャント側の冷たさや色の変化は早めに知らせます
シャントのある腕で、手が冷たい、色が変わった、痛みが強いなどの変化がある場合は、血流の評価が必要になることがあります。しびれだけの問題と決めつけないでください。透析中に変化した場合は、終了まで待たずにスタッフへ知らせます。(参考:National Kidney Federation:シャントのケア)
予約日を待たない変化
急な強い痛み、手が白い・紫色になる、著しい冷たさ、動かしにくさがある場合は、すぐに医療機関を受診してください。シャントの振動がいつもと違う、感じられない場合も直ちに透析施設へ連絡し、指示を受けてください。
ご自身でシャントを強く押す、腕をきつく縛るなどの対応はしないでください。家庭で様子を見るか受診するか迷うときも、まず連絡して症状を伝えます。急に片側の手足が動かしにくい、ろれつが回らない、顔の片側が下がる場合は119番で救急要請してください。
診察で役立つのは、症状の場所と時間の記録です
| 記録する項目 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 場所 | 右手の親指側、左手全体、両手など |
| 時間 | 夜中、起床時、透析中、帰宅後など |
| 感覚や見た目 | ピリピリ、感覚が鈍い、冷たい、色が違う |
| 困る動作 | 箸、ボタン、薬の袋、筆記など |
透析の前後だけでなく、普段の場面も伝えます
症状が出る時間を、透析と結びつけて記録します。同時に、透析のない日にもあるか、夜間に目が覚めるか、同じ作業で強くなるかを添えます。短いメモで構いません。症状が出たからといって、無理に同じ動作を再現する必要はありません。
手を使う仕事や家事がある方は、どの作業で困るかを具体的に伝えてください。ご本人にとって重要な動作がわかると、診療で確認したい目標も共有しやすくなります。治療の相談と合わせ、日常で避けるべき負担があるかを確認しましょう。
薬や過去の手術も確認します
お薬手帳に加え、手首や首の病気、けが、手術の経験があれば知らせてください。以前しびれの治療を受けた方は、その時期や方法、効き方を覚えている範囲で伝えます。検査結果や紹介状が手元にあれば持参してください。
記録がなくても相談はできます。症状が強いときに資料探しを優先しないことが大切です。「前に何という病気と言われたか思い出せない」と伝えたうえで、今困っている変化から診察を受けましょう。
- 指の場所を簡単な手の絵に印を付けて伝える
- 物を落とすなどの変化は、起きた場面を一つ書く
- 強い痛みや色の変化があれば、メモより連絡を優先する
受診までの生活で、負担と事故を減らします
市販の固定具や痛み止めを自己流で追加しません
手首を休ませる方法が役立つ病気もありますが、シャントのある腕は、きつい衣類や装身具などで締め付けないことが大切です。(参考:National Kidney Federation:シャントのケア)固定具やサポーターを自己判断で購入・装着せず、使ってよいか、位置や締め付けの程度を主治医や透析スタッフに相談してください。しびれを我慢するために、市販の痛み止めやサプリメントを追加することも避けましょう。
熱い鍋や重い荷物を扱う際に不安がある場合は、手伝いを頼む、作業を分けるなどの工夫を考えます。感覚が鈍いと感じる部分に、強い熱や冷却を加えないようにしてください。仕事への影響が大きければ、その点も受診時に伝えましょう。
透析施設と専門科で情報を共有します
手の検査や治療のために別の診療科を受診する場合は、透析の曜日、シャントの位置、薬の情報を伝えます。専門科で出た薬や処置の予定は、透析施設にも知らせてください。受診先によって説明が違うと感じた場合は、ご自身だけで調整せず確認を依頼します。
当院で透析を受けている方は、看護師や臨床工学技士へ「最近、箸を持つ指がしびれる」と短く声をかけていただいて構いません。透析に関係するか判断してから相談する必要はありません。症状の経過を整理し、必要な診療につなげます。
よくある質問
シャントのない手がしびれても相談してよいですか?
はい。神経など別の原因が関わる場合もあります。どちらの手かだけで判断せず、場所と時間、困る動作を伝えてください。
夜だけしびれて、昼は平気なら様子を見てよいですか?
繰り返して眠りを妨げる場合も相談してください。診察時に症状がなくても、夜の経過を伝えることが判断材料になります。
手を振ると楽になるので、手根管症候群でしょうか?
一つの特徴だけでは診断できません。自己テストで決めず、医師に感覚や筋力、症状の範囲を確認してもらいましょう。
痛みより、ボタンを留めにくいことが気になります。
動作の変化も大切な情報です。いつから、どんな作業が難しくなったかを知らせてください。痛みが弱いから相談不要ということはありません。
整形外科の予約まで、透析を休むべきですか?
自己判断で透析を休まないでください。症状と予約日を透析施設へ伝え、急な異常がある場合は予定日を待たずに連絡してください。
ご相談・お問い合わせ
手のしびれや使いにくさに気づいたら、当院の透析スタッフへお知らせください。必要な診察と、ほかの診療科との情報共有について一緒に確認します。透析についてのご相談・お問い合わせは、お電話または予約ページのメールフォームから承ります。
※本記事は、透析中の手のしびれについて、受診や相談の前に整理したい点をまとめたものです。原因や治療は患者様ごとに異なります。シャントの異常や急な症状がある場合は自己判断せず、主治医または医療機関にご相談ください。
